ハザードマップの落とし穴と正しい理解②(地震編)

前回のハザードマップ(基礎~津波編)に引続き、今回はハザードマップの(地震編)です。
皆さんは地震ハザードマップ(または災害ハザードマップ、地震防災マップ)はご覧になった事があるでしょうか。地震ハザードマップの内容は「揺れやすさ」「地域の危険度」、そして地域状況に合わせて「液状化の危険度」「火災の危険度」「人的被害」などが掲載されています。
地震ハザードマップなど被害マップの公開状況はコチラヘ
※公開されていない場合は、お住まいの自治体のホームページか、防災部署にお尋ねください。
※一部の自治体では、地震被害想定調査の見直しを行っているため、地震ハザードマップの提供を止めている場合もあります。
◆地震ハザードマップの目的
前回にも記しましたが、ハザードマップは予測される被害の規模や範囲を、住民の皆さんに把握してもらい、事前の防災対策を促すことにより、被害の低減を図ることを目的としています。
地震ハザードマップにおいては、過去の地震(阪神・淡路大震災など)から建物倒壊等による死因が高いことから「耐震診断及び耐震改修(補強)の促進を図る」ことを目的とされています。
また、室内においての地震対策や自治体で行っている耐震診断・耐震改修の補助・助成などについても併記されていることもあります。
※耐震診断・耐震改修の補助・助成については、お住まいの自治体にお尋ねください。


◆危険度の解説
地震ハザードマップのベースになっているのが、地震被害想定の調査結果です。
この調査結果の一部を住民の皆さん向けに、わかりやすくマップに表現したものが、地震ハザードマップとして公開されています。
◎「揺れやすさ」・・・想定される震源や地震の規模(マグニチュード)、表層の地盤を基にして、各地域の震度(または計測震度)や揺れやすさの度合いを表しています。
◎「地域の危険度」・・・いわゆる建物の倒壊危険度です。上記の揺れやすさを基本に、建物構造や建築年毎の全壊率を加味して、メッシュ内(または地域)で全壊する建物の危険度を表しています。
◎「液状化の危険度」・・・地形分類や表層地質、ボーリングデータなどを基にして、液状化の発生する度合いを表しています。
○「火災の危険度」・・・地震による建物被害が原因とされる火災の出火点数や延焼焼失量、木造建物の密集率から危険度を表しています。
○「人的被害」・・・建物倒壊による被害を中心に火災の発生量などを勘案して、人的被害を表しています。
◆危険度の落とし穴(注意点)
地震ハザードマップは地震被害想定調査時のデータを使用していることが多く、精度や時点にバラつきが生じることがあります。
また、ハザードマップ策定時の設定や算出方法が異なるため、隣接する自治体と、かい離が生じることも少なくありません。

○「揺れやすさ」・・・過去のデータから、確率の高いとされる地震(位置・規模)や地盤が設定されており、地震が発生した場合の震度分布を細かく表記しています。
しかし、実際の地震はどこで発生してもおかしくはありません。お住まいになっている直下が震源になりうることも考えておきましょう。
◎「地域の危険度」・・・建物倒壊に使用するデータは自治体の家屋課税台帳を基に倒壊率を算出していますが、このデータと地図に示されている建物(メッシュ)がイコールとは限りません(画像参照)。
建物の倒壊危険度

建物の倒壊危険度

また、1つのメッシュ内に建築年の異なる建物が混在しているため、平均化されてしまいます。
このため、新しい建物ばかりの中に、倒壊する恐れのある古い建物が1棟あった場合でも、安全な地域(メッシュ)として表記されてしまい、逆に古い建物ばかりのメッシュ内に新しい建物が1棟あった場合は、危険度が高い地域(メッシュ)として表記とされてしまうことがあります。
ここで注意しなければならない点は、メッシュ内の危険度表記は平均化されされたものだという事を念頭に置き、ご自分の家が「何年に建築された建物」なのかをチェックする必要があります。
下記の画像は過去の地震から導き出された木造建物の「震度と建築年の全壊した建物の被害傾向」を表したものですが、ご自分の家が何年に建築されたものなのかを照らし合わせて見ることにより、倒壊する危険度がある程度把握できるかと思います。
木造建物の全壊率

木造建物の全壊率


必ずしも、この通りになる訳ではありませんが、目安として自分が住んでいる場所の予測震度や地盤状況を勘案しながら、チェックしてみて下さい。
※建物倒壊に関する記事は、改めて詳細に掲載する予定です。


◎「液状化の危険度」・・・一般的に液状化しやすい地形として、最も危険度が高いのが埋立地(盛り土含む)や河川・湖沼・湿地帯の跡地、次に谷底平野、三角州、砂州、自然堤防と呼ばれる地形が危険とされています。
日本建築学会「液状化被害の基礎知識」より

日本建築学会「液状化被害の基礎知識」より

注意しなければならない点は、上記の建物倒壊は液状化による危険度が加味されていない点です。すなわち液状化の危険度が高い地域は、建物の倒壊による危険度も、より増大されるということを念頭に置いておく必要があるのです。
また、このような場所では、液状化が発生しなくても、他の地域よりも大きな揺れに見舞われる危険があるため、ご自分の住む家や勤務先の建物が大丈夫であっても、液状化によるライフラインの途絶のリスクも高くなることを知っておく必要があります。
参照:液状化対策(液状化による影響~対策案)について

○「火災の危険度」・・・木造建物が密集している地域では、火災の危険度を公開している自治体もあります。
地震火災による出火点の確率や延焼データを基にして作成されており、一般的に地域の面積に対して、木造建物の建築面積の割合が高い地域が危険とされています。
ご自分の住む家の周りは、木造建物が密集していないか、隣棟間隔(家と家との隙間)が充分確保されているか、延焼遮断帯となる道路や非木造建物の有無などをチェックする必要があります。
「ドキュメント災害史」より

「ドキュメント災害史」より

ここで注意しなければならないのは、これまでの地震被害想定調査の被害予測では、火災が同時多発的に発生した場合や大渋滞・交通障害による消火遅延が加味されていない事です。そのため地震による火災が同時多発的に発生した場合は、被害予測よりも大きな延焼になる危険性もあります。 このことからも大火になる前に住民の皆さんで行う初期消火が最も重要となります。
○「人的被害」・・・建物倒壊による被害+家具類の転倒による被害+地震火災による被害+ブロック塀や落下物による被害+がけ崩れによる被害から、人的被害を予測しています。
ここで注意をしなくてはならないのは、火災の危険度と同様、被害の規模が大きくなるほど、救急車などの緊急車両の到着が大幅に遅れたり、医療機関での対応が遅延することが考えられます。 そのためにも建物の耐震診断・補強、家具類の固定、消火器の用意などが必要となって来ます。


◆地震ハザードマップは、被害が最も大きくなるとされている冬の夕方を前提(暖房器具を多く使う時期で、調理などで火を使っている時間帯)としているため、季節や時間帯、地域状況によっても被害の大きさは変わってきます。
地震対策上、ご自分の住む場所がどのような災害リスクがあるのかを知っておくことは大変重要です。
特に揺れやすい地域にお住まいの方には、地盤を正しく把握した上での建物の耐震診断・耐震補強。次いで屋内の家具の固定から優先的に行っていただくことをお勧めします。

次回、第3回は洪水・浸水ハザードマップについて
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