災害リスクアドバイザー 松島康生 

生活に重大な影響を及ぼす液状化現象

■液状化現象とは

現象としては「地下の水分を含む砂地盤が、地震の振動により水と砂が分離して水分だけが地上へ噴き出す現象」を言います。これにより重い構造物は沈んだり、傾いたり、軽い地下埋設管などは浮いたような状況になります。

液状化の原理が分かりやすい映像をYouTubeでみつけましたので、ご覧になりたい方はこちらからどうぞ。

■液状化を起こしやすい地形

一般的に液状化が発生する可能性の高い地形は下記の通りです。

旧河道・・・元々河川があった場所で、蛇行河川の整備や小川を埋め立てたケースが多い(河川沿いの液状化の事例など)

埋立地・・・海岸や干拓地、湖、また山などを切り崩して窪地や低湿地へ大規模に埋め立てられた盛り土地(海岸沿いの液状化の事例など)

◎氾濫平野・谷底平野・・・台風などで氾濫した河川が上流から運ばれた砂泥などが低地に溜まってできた地形

◎砂州・砂礫・・・河川で運ばれてきた砂が湾口や陸側をふさぐような形で溜まった地形

◎海岸平野・三角州・・・広義には関東平野や大阪平野のように○○平野と呼ばれる海に面した平地がこれにあたりますが、ここでは海岸部の水分を含んだ土砂などが溜まってできた地形とお考え下さい。

◎後背低地・・・別名を後背湿地とも呼ばれ、河川沿いの砂地で排水性が悪くなり、腐葉土などが溜まってできた場所

※要約すると、元々水や土砂が溜まっていた地形が液状化を起こしやすい場所となります。

■地図でみる液状化の成り立ち(メカニズム)

上記のような場所はどのように形成されたのかを理解しやすいように、古地図を使って液状化などの成り立ちをMOVE形式で作成してYouTubeにアップしました。

http://www.youtube.com/watch?v=6sINiZGBypc

90秒でわかる液状化の成り立ち(なぜ、液状化は起きたのか)

 

1.埼玉県久喜市南栗橋地区

2.千葉県我孫子市

3.千葉県浦安市

 

 

■過去の液状化被害地域

液状化の研究が進んでいなかった1964年の新潟地震では集合住宅の倒壊や信濃川沿いに液状化被害が発生しました。これを機に建築基準法が改正されるようになります。

新潟地震で大きく傾いた県営川岸町アパート(Wikipediaより)

 

 

 

 

 

1995年の阪神・淡路大震災によるポートアイランドや新幹線の橋脚被害などが被害を受けました。また、多くの一般住宅も被害が発生していました。

2004年の新潟県中越地震では湖沼や水田を埋め立てた地域を中心に液状化が発生。

2011年の東日本大震災では浦安市の湾岸沿い埋立地をはじめ、利根川などの河川沿いや旧河道(昔河川だった場所)、霞ヶ浦近辺の湖沼の埋立地など、震源から300kmを超える関東圏でも広範囲に影響がありました。

■少しの傾斜で・・・

家の建物自体に直接的な被害がなくとも、液状化による沈下の傾きは重大です。

床面の傾斜は住む人の健康被害を誘発するケースがあります。 (社)日本建築構造技術者協会(千葉)の調べでは、たった0.2度の傾斜でも違和感を感じ、0.5度以上の傾きで平衡感覚(三半規管)に障害が発生し、めまいや吐き気を起こすなどの報告があります。

傾斜した場所で生活すると、三半規管に障害が発生し、その結果、原因不明の頭痛、めまい、吐き気が起きるなどの後遺症が残るケースがあります。

床面の傾斜

 

 

 

 

■液状化による重大な弊害…ライフラインの途絶

液状化が発生しても、即、命に関わることは少なくなって来ましたが、社会生活上では甚大な影響が発生します。東日本大震災でも千葉県湾岸エリアや茨城県、千葉県、埼玉県の河川沿いが多くの液状化被害を受けて新聞・TVで建物が沈下して傾いたり、地下埋設管が浮き出ていた様子をご覧になったかと思います。

上記以外にも千葉県習志野市近辺では、道路のアスファルト下の砂地が水と共に噴出して空洞化して道路陥没がみつかりました。市の調べでは340カ所余りの空洞化が見つかりました。

液状化による道路の空洞化

 

 

 

 

 

 

また、家が大丈夫であっても、電柱が傾き電線類が断線したり、地下埋設管の水道、下水道、ガスなどのライフラインに重大な影響が出ます。 まさに生命線が途絶えて通常の生活ができなくなる可能性が高くなるのです。

このことから液状化が予想される地域では、マンションであってもライフラインの途絶を考慮して、多めの飲料水、生活用水の確保、簡易トイレやカセットコンロの用意なども準備しておくことをお勧めします。

※ライフライン・・・水道・下水道・ガスをはじめ、電気・電話のようなエネルギーや通信、道路のような交通を指します。

地下埋設管ライフラインのイメージ図

 

 

 

 

 

 

 

■今後の対策

今回の東日本大震災で液状化の影響なかった場所でも、首都圏直下型地震が発生した場合はもっと大きな揺れに見舞われ、もっと広範囲に影響が出ると考えられます。一生に一度、自分の住む土地の液状化に対するリスクをきちんと把握することが重要です。上記を参考に具体的な対策に取り組んでいただければ幸いです。

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文責:災害リスク評価研究所 松島康生

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松島 康生
この記事を書いた人
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