災害リスクアドバイザー 松島康生 

震災後の建物のダメージによる耐震性

質問:
東日本大震災から、だいぶ経ちますがまだ頻繁に地震が続いています。
震災で結構ゆれた建物が多数あると思うのですが、それら建物は震災で受けたダメージは蓄積していないのでしょうか?
関東で大地震が起こると頻繁にマスコミが言っているので気になっています。

回答:室内外の壁面・基礎部分の点検と地盤の把握を!

質問者様が言われるように、地震で受けた建物のダメージ=損傷の蓄積は気になるところですね。

我が家に於いても、東日本大震災の影響で、外壁面に若干のクラックが発生したため、念のため確認をしてもらい、補修をした経緯があります。

被災建築物応急危険度判定士でもある耐震診断のプロに聞いたところ、東日本大震災で柱や壁に直接的な損傷が無い場合であっても、多くの場合は継手や仕口と呼ばれる接合部分がゆるんだり、損傷を受けているかも知れない。と言う事でした。接合部

また、外から見えない木材の腐食や白アリの被害などが進んでいると、強度が低下して大きな地震が発生すると耐えられない場合もあるようです。

さて、私の専門である災害リスクという観点から、申し上げますと・・・

一般的に建築基準法の改正による昭和56年(1981年)以降に建てられた木造建物であれば、新耐震基準が適用され、おおむね震度6~7にも耐えられるとされていますが、絶対に安全だという保証があるわけではありません。

新耐震基準を要約すると「すぐには崩壊しない程度」こととされているため、質問者様が懸念されている建物ダメージの蓄積までは計算されていないという事になります。

また、施工会社によっては耐震基準ギリギリで設計・施工されているため、一度の揺れで耐えられても複数の大きな地震(余震など)により、崩壊することも予想されます。

複数の地震で損傷を受けた建物が崩壊している実験映像が、防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター(別名:E-Defense)で公開されていますので参考にしてください。

※実際に建っていたほぼ同じ仕様の2棟の木造住宅(築約30 年)を使って、阪神・淡路大震災と同じ揺れを再現した実験映像です。なお、右側の建物はコンクリート基礎造になっています。Eディフェンス

一回目の地震
http://www.bosai.go.jp/hyogo/research/movie/wmv/20070228_1.wmv
左側の建物はかろうじて持ちこたえていますが、一階部分の壁面や玄関・窓枠に変形が見られます。

二回目の地震
http://www.bosai.go.jp/hyogo/research/movie/wmv/20070228_2.wmv
左側の建物は地震が発生して5秒足らずで崩壊しています。
右側の建物も一階部分が激しく変形して窓枠のサッシが崩れています。
補足

四回目の地震
http://www.bosai.go.jp/hyogo/research/movie/wmv/20070305_4.wmv
右側の建物は複雑な揺れの後に一階部分から激しく崩れています。

参考:新耐震基準を満たした長期優良住宅である3階建て木造軸組構法住宅(耐震等級2)の加震実験映像です
http://www.bosai.go.jp/hyogo/research/movie/wmv/20091027.wmv

併せて、建物が建っている地盤状況を把握される事をお勧めします。
軟弱地盤や液状化地盤に建っている建物は、他の場所に較べて揺れが増強することが予想されます。
地盤の違いを簡単にイメージしてもらうと・・・テーブルを揺らした時、その上に置かれた「ようかん」「コンニャク」「プリン」はそれぞれ揺れ方(固有周期)が違います。この上に家が建っていると考えていただければ、揺れの違いに想像つくかと思います。地震動の伝わり(伝搬) 国土交通省資料

参考:液状化地盤の詳細について
https://mng.allabout.co.jp/professional/object/detail/id/127211/

※まとめ
⇒建物のダメージ=損傷は蓄積し、さらに経年変化による劣化があることことを認識しておくことが必要となります。
⇒併せて、建物に直接的な影響を与える「地盤」を把握しておく必要があります。

※対策
⇒室内や外壁面、基礎部分にクラック(ひびや亀裂)がないかの点検。
⇒大きな地震後や定期的(5~10年毎)な専門家による建物の点検。
⇒地盤(地質)の把握、および地盤に適した耐震化(補強)の検討。

なお、詳細のご相談はこちらでも受け付けております。
災害リスク評価研究所
http://www.saigai-risk.com/

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松島 康生
この記事を書いた人
災害リスク評価研究所 代表
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